紫外線の種類を知る — UVAとUVB
太陽から届く紫外線のうち、肌に影響を与えるのは主にUVA(波長315〜400nm)とUVB(波長280〜315nm)の2種類です。
UVBは表皮に作用し、日焼け(サンバーン)やシミの直接的な原因になります。一方UVAは真皮層まで到達し、コラーゲンやエラスチンを分解してしわ・たるみの原因となります。UVAは雲やガラスも透過するため、曇りの日や室内でも対策が必要です。
日焼け止めはこの2種類の紫外線からそれぞれ肌を守るためのものであり、SPFがUVB、PAがUVAに対応しています。
SPFの本当の意味 — 「時間」ではなく「量」
「SPF30なら30倍の時間日焼けしない」——この説明は広く知られていますが、正確ではありません。SPF(Sun Protection Factor)はISO 24444に基づいて測定され、UVBによるサンバーン(最小紅斑量:MED)をどれだけ防げるかを示す数値です。
具体的には、日焼け止めを1cm²あたり2mg塗布した肌と、塗布していない肌に紫外線を照射し、サンバーンが起きるまでの紫外線量の比率を測定します。SPF30なら、未塗布時の30倍の紫外線量でようやくサンバーンが起きるという意味です。
重要なのは、この「30倍」は時間ではなく紫外線の総量であること。紫外線が強い時間帯ではSPF30でも短時間で限界に達します。
PAの仕組み — UVA防御の指標
PA(Protection Grade of UVA)は日本化粧品工業連合会(JCIA)が制定した独自指標で、UVAに対する防御力をPA+〜PA++++の4段階で表します。測定にはISO 24442に基づくPPD(Persistent Pigment Darkening)法が用いられ、UVA照射後の皮膚の黒化をどれだけ抑えるかを評価します。
【PA+】PPD 2〜4:効果がある 【PA++】PPD 4〜8:かなり効果がある 【PA+++】PPD 8〜16:非常に効果がある 【PA++++】PPD 16以上:極めて高い効果がある
日常使いならPA++〜PA+++で十分ですが、長時間の屋外活動ではPA++++が推奨されます。
紫外線吸収剤と散乱剤の違い
日焼け止めの紫外線防御成分は大きく2種類に分かれます。
【紫外線吸収剤(ケミカル)】オキシベンゾンやアボベンゾンなどの有機化合物が紫外線のエネルギーを吸収し、熱として放出します。テクスチャーが軽く白浮きしにくい反面、まれに肌への刺激やアレルギーを引き起こす場合があります。
【紫外線散乱剤(フィジカル・ミネラル)】酸化チタンや酸化亜鉛などの無機粉末が紫外線を物理的に反射・散乱させます。肌への刺激が少ない反面、白浮きしやすくテクスチャーが重い傾向があります。
近年はナノ粒子技術の進歩により、散乱剤の白浮きは大幅に改善されています。敏感肌の方にはノンケミカル(散乱剤のみ)タイプが推奨されます。
“「ケミカル=危険」ではない。吸収剤も散乱剤も適切に使えば安全。肌との相性で選ぶのが正解。
塗り直しが必要な科学的理由
日焼け止めの効果は時間とともに低下します。その原因は主に3つです。
1つ目は物理的な脱落。汗、皮脂、摩擦(タオルで拭く、手で触るなど)によって塗布膜が薄くなり、防御力が低下します。
2つ目は光分解。紫外線吸収剤は紫外線を吸収する過程で分子構造が変化し、徐々に防御機能を失います(光安定性の問題)。
3つ目は塗布量の不足。ISO規格では1cm²あたり2mg(顔全体で約0.8〜1g)の塗布が前提ですが、実際にはこの半分以下しか塗っていない方が多いです。塗布量が半分ならSPF値も大幅に低下します。
2〜3時間おきの塗り直しが推奨されるのは、これらの要因で防御力が下がるためです。
まとめ
SPFはUVB、PAはUVAに対する防御指標であり、どちらか一方だけでは不十分です。吸収剤と散乱剤にはそれぞれ長所と短所があり、肌タイプやライフスタイルに合わせて選ぶことが重要です。
そして何より大切なのは、適切な量をしっかり塗り、こまめに塗り直すこと。どんなに高いSPF値の製品でも、正しく使わなければ数値通りの効果は発揮されません。紫外線対策は「製品選び」と「使い方」の両輪で成り立ちます。
References
- [1]ISO 24444:2019 — In vivo determination of the sun protection factor (SPF)
- [2]ISO 24442:2022 — In vivo determination of sunscreen UVA protection
- [3]ISO 23698:2024 — Measurement of sunscreen efficacy by diffuse reflectance spectroscopy
- [4]日本化粧品工業連合会(JCIA)「SPF・PA表示に関する通知」

